2013年12月31日火曜日

キリンとカバの目覚めた姿 (平成25年12月)

いよいよきりん舎・かば館がオープンを迎えました。

最大の難関である動物の引っ越しも無事に終わり、キリン、カバ、ダチョウの
新施設での生活が始まりました。
数日間は新しい寝室で過ごし、寝室の居心地の良さ、
安心を動物たちに感じてもらいます。
と同時に動物が暮らし始めて初めてわかる
設備上のちょっとした不具合の改善なども行います。

動物たちが寝室に慣れた頃を見計らいいよいよ放飼場への扉を開けます。
放飼場にはよりキリンらしくよりカバらしくよりダチョウらしく生活できるよう
新たな工夫がたくさんあります。

果たしてそれらが動物たちに無理をかけるのではなく、ふとその動物らしさを
引き出すようにできたのか?私たちにとっても緊張の瞬間です。

キリンは寝室になじむのも順調で、寝室では施工業者さんと共に悩んだ、
足が滑らない床もほぼ完璧に機能し、
キリンたちは引っ越し当日からとても落ち着いていました。

初めての放飼場は?前からここで暮らしていたかのように落ち着いていて、
悠々と歩き始めました。ふと気がつきました。歩幅が広い!
総合動物舎の放飼場は傾斜があったからなのか?そして走りました。
映像で見るアフリカの大地を走る
スローモーションのような独特なあの走り方です!
あっこれでもう大丈夫!そう確信しました。

次はカバです。おばあちゃんのザブコは新しい環境に戸惑っています。

46年間過ごした景色、険しい段差、体の使い方
すべてが体に染みついていて、
安心快適な新しい世界になじむには
ザブコに一つ一つ納得してもらうしかありません。
初めての土を踏ませてやりたい、はやる気持ちを抑えなければいけません。

百吉は若く好奇心が旺盛です。寝室にもすぐに慣れ、
いよいよ室内プールへの扉を開けました。
なだらかなスロープで入水できる水深1,2メートルの場所までは
すんなりと入っていきました。

ここからがカバの秘められた能力が目覚めるか、
読み違えてないか、の勝負でした。
カバは水よりも比重が重たいので
水中では泳ぐのではなく水底を歩きます。

一番深い水底まではスロープではなく
エイヤッと潜らなければいけない構造になっています。
百吉は、水中を見回しエイヤッとは潜りませんでしたが、
浅い水深のプールの縁を歩き深みの縁で足を踏み外しました。
カッと目を見開き、芋虫のように体をくねらせ沈んでいきました。
溺れた!ドキッとしました。

でも水底に着地した瞬間、百吉は冷静になり、
水面を見つめ地面を蹴りジャンプしました。
まるで空を滑空するように、水面に到達し浅瀬に着陸しました。
秘められたカバの能力が目覚めた瞬間に思えました。

ダチョウは外構工事の関係で、無理をせずに様子を見ています。
とにかく是非見に来てくださいね。

2013年11月30日土曜日

食について考える (平成25年11月)

さて早いものでもうすぐ冬季開園になりますね。
10月はと言うより10月も変な天気でしたね。
自分は台風26号が太平洋側をかすめた日に帯広に行きました。
雪が降り積もる中決死の思いでたどり着いたのですが、
大きな木が目の前で倒れるのを見てこりゃダメかもと思いました。
木の葉が落ちる前にしめった雪が積もったことで、
どの木も大きくしなっていました。
記録的に早い降雪でしたが、
ヒトだけではなく北海道の木でさえも予測できないほど早い降雪でした。
こりゃヒグマも慌てているな、大丈夫かなと心配になりました。

今は、キリン、カバ、ダチョウの引っ越しの準備でてんやわんやしています。
特に大人のキリンを檻どりして引っ越しをすることは
全国的にもあまり行われておらず、旭山でも始めてのことになります。

旭山史上ある意味最大のイベントかも知れません。
と言うこともあり、冬季開園に合わせてオープンするきりん舎・かば館は
現在いる動物の引っ越しがメインとなり、新たに導入予定の動物たちは、
暖かくなる来春に向けて順次導入し、
グランドオープンは来春と言うことになりそうです。
さまざまな機械設備の試運転や手直しなどやることが満載です。

話は変わりますが先日給食のパンに小さなハエが混入していて、
児童にハエの部分を取り除き食べさせていたことが
問題として報道されていました。
マニュアルや異物の定義など
お役所の対応にもっぱら批判めいた論調がされていました。

一般的にハエは公衆衛生上、
さまざまなばい菌などを運ぶ媒介昆虫として問題になりますが
ハエ自体に毒があるわけではありません。
製造出荷の課程で衛生上の問題はなく、
たまたまハエが混入したのであれば、
不快に感じるかは別問題として、
高熱で処理をしたハエは食べてしまっても
衛生上は問題はないわけで、
すべてのパンを廃棄するのではなく
ハエが混入した部分を取り除き給食に供した判断は
必ずしも間違ってはいなかったと思われます。

むしろハエが混入したパンを
食育の教材として活用したらいいのになって思いました。
肯定、否定様々な意見が出るでしょうが、
昆虫食は地球規模での人口増加に伴う
食糧危機を救うキーになる可能性を秘めています。
極論ですがエビの掻き揚げと同じく
養殖ハエの掻き揚げなんて時代が来るかもしれません。

むしろ昆虫タンパクの方が良質かも知れません。
自分も保護される昆虫食の小鳥やコウモリなどに
ミルワームを餌として与えていて、
みんなあまりにもおいしそうに食べるので、食べてみました。
期待に反してさほど美味しくはなかったですが…
でもいざとなれば佃煮にすれば
なんでもいける気がします。

食欲の秋です。ちょっと食について考えてみました。

2013年10月31日木曜日

目覚めたアライグマ (平成25年10月)

早いもので夏期開園も後一ヶ月あまりで終わりますね。
これからが一年で二番目に忙しい閉園期間です。
ちなみに一番目は夏期開園準備の4月です。
夏期開園期間中にお客さんに迷惑をかけないよう
にだましだまし使っていた設備類や
動物舎のの修繕、樹木の冬囲い…
なんと言っても今年はきりん舎・かば館のオープンを控えています。
10月中には動物たちの引っ越しを終わらせたいと考えています。
冬季開園に合わせてのオープン予定なので動物の施設への馴致、
看板の作成、設備類の初期不良や不具合のチェック等々きっとてんてこ舞いです。

さて北海道産動物舎の近況を一つ。アライグマです。
実は一番の心配個体でした。
もともとレッサーパンダなどがいる小獣舎で飼育していたのですが、
こっちに引っ越してきました。
隣のエゾタヌキとの比較展示が目的で、木登りが得意、手先が器用、
壁を登る、戸を開ける…さまざまな能力を見て頂き、
なぜアライグマが特定外来種になったのかを
来園者自らが発見し理解してもらおうと考えていました。

ところがこのアライグマは開園時間中はほぼ動きがありません。
もともと夜間に活動するのですがそうではなく、
ひたすら外の刺激を遮断してじっと動かないのです。
最終的には来園者から丸見えのアクリルの小部屋で
ひたすらじっとするようになりました。
暑い日差しの強い日もです。
熱中症が心配で水を凍らせたペットボトルを置いたりもしました。
このままでは個体にも展示としてもよくない状況でした。

実りの季節になり農家さんや職員の実家の農家さんから差し入れが届きます。
まずスイカです。丸ごと与えてみました。 
閉園近い時間でしたがなんと食べに動きました。
それも一カ所に穴を開け中の身だけをくり抜くように食べました。
被害にあった農家さんのスイカと同じだ…
次にトウキビをいただいたので与えてみました。

これがアライグマ本来の習性を目覚めさせました。
木にぶら下げれば採りに登りひたすら器用に手を使いきれいに食べ終わるまで
周りを気にすることなく食べ続けます。
池にフナを入れるとまさに手でものを洗うように水中をまさぐり
フナを捕まえてむしゃむしゃと食べるようになりました。

開園時間中でも活発に動き回るようになり、目がランランとしています。
そうか、アライグマにとってヒトが作る農作物は
特別な魅力のある食べ物なんだと発見した気がしました。
単に雑食性のアライグマ=農作物の被害
と言った構図ではないのかも知れないなと感じました。 

2013年9月30日月曜日

海鳥のヒナの巣立ち (平成25年9月)

とても暑い夏も終わりと思っていたら残暑が厳しいですね。
ちょっとうんざりです。
恒例の夜の動物園もたくさんの方に来ていただきありがとうございました。
たくさんの歓声を聴き、笑顔を見て、自分たちも頑張った甲斐がありました。
結局5日間とも雨らしい雨は降らなかったのですが、天気予報は雨マークで
ちょっと恨めしかったですけどね。
遠方の方は天気予報を見てどこに行くか決めるので、
雨マークはよろしくないですよね。
せっかくの夜の動物園なのに…
今年はスタルヒン球場でのナイターがかぶり、
皆さんにとってはうれしい選択肢が増えましたね。
お盆は忙しくなりますね。 

8月はイベントがたくさんあるのですが、
夜の動物園に先立ち天売島に行って来ました。
あの小さな島に100万羽の海鳥が集まり繁殖をします。
6月に訪れた時はまさに繁殖の真っ最中だったのですが、
8月はほぼ繁殖期は終わり、ヒナたちは巣立ち親鳥の姿も激減していました。

オロロンチョウも今年は9羽のヒナが巣立ったとのことで姿はありませんでした。
それでもまだわずかに残っている鳥たちがいました。
ウトウです。
夕暮れと共にヒナに与えるカタクチイワシをくちばしに挟み
地面に掘った巣穴に戻ってきます。
ふと足元を見ると巣穴から出て海を目指すウトウのヒナを見つけました。
まだどう見ても綿羽で、風切り羽根も生えそろっていません。
足下もふらついています。

ウトウの巣立ちは親が巣に戻らず、
お腹の空いたヒナが巣から出て海に向かうと言う厳しいものです。
親鳥も体力の限界ギリギリまで雛に餌を運びますが、
このヒナの親はここまでが限界だったのでしょう。
別の巣立ちビナがカモメに食べられていました。
きっとこのヒナも同じ運命をたどるのかと
改めて自然の厳しさをかいま見た気がしました。

海からケイマフリやオロロンチョウ、
ウミウなどの繁殖地も観察しました。
多くのウミネコ、オオセグロカモメのヒナが巣立っていました。
そして岩礁には数頭のゴマフアザラシも日向ぼっこをしていました。
本来冬の使者であるゴマフアザラシは
今では通年見られるようになりました。

島を去る際、世界に誇れる海鳥の奇跡の島が、
来年も同じであって欲しいと心から思いました。
現在進めている海鳥館の設計もほぼイメージが固まりました。

北海道はつくずく凄いところなんだと思います。 

2013年8月31日土曜日

新しく来園したカバ (平成25年8月)

7月4日の未明、長崎バイオパークからカバの百吉がやってきました。
7月2日に長崎を発ち日本海をフェリーで渡りやってきました。
百吉は2011年5月28日生まれの2才です。
まだまだ小さいのですが、オスの子は親離れの年齢です。
名前の由来ですが、
2011年は日本に始めてカバが来てから100年目と言うことで「百」、
たくさんの人に幸せをもたらすようにと「吉」で百吉だそうです。
とても素晴らしい名前をもらったカバです。

来園してからの百吉はとても落ち着いていて
順調に旭川の気候にも旭山の飼育環境にも
飼育係にも慣れてくれました。
とても適応力のある個体です。
秋には新居への引っ越しを控えていますが、百吉ならば問題ないでしょう。

旭山動物園には、49才のザブコがいます。
ザブコは昭和42年の動物園開園当初から旭山で生活しています。
お客さんの中には、自分が子供の頃にザブコを見て
今はお孫さんを連れてザブコを見に来ている方がいるかも知れません。
そう考えると命を預かることって凄いことなんだなと改めて思います。

足腰の弱ったザブコは水中では浮力が働くので機敏に動けるのですが、
陸上を歩くのは負担が大きいため3日に1日のペースで屋外の放飼場に出して
日光浴とリハビリ的な運動をしています。
エサは寝室の陸上で食べるのですが、立ったまま食べることができなくて
短い足を投げ出して横になって食べています。 

と言うことで2日百吉1日ザブコの3日サイクルで
屋外放飼場に出ていることになります。
百吉が外にいる日の来園者の第一声は
「カバってあんなに早く動くんだ!」です。
確かにザブコはここ10年近く朝プールにはいる時、
夕方寝室に戻る時くらいしか
動く姿をほとんど見ることはありませんでしたから… 

旭山の今までの半世紀近くを見守り続けてくれているザブコ、
これからの半世紀を旭山で過ごす百吉、
ザブコの住みかとしてボロボロになった総合動物舎は
今年きりん舎・かば館として生まれ変わります。
新たな半世紀の始まりとして百吉が来たように感じます。
動物たちに、来園者にたくさんの幸せをもたらしてくれますように。
来園したカバの「百吉」(ゲンちゃん画伯)

                     



2013年7月31日水曜日

ホッキョク○○○ (平成25年7月)

遅い春の帳じりを合わせるかのような暑い日が続いたかと思えば、
暑さも一服で肌寒くなったり忙しい天気が続いています。
 子供を亡くしたキリンのマリモは、6月に入り交尾をしました。
来年の秋こそ無事に赤ちゃんが成育してくれるよう万全を期したいと思います。

6月の出来事としてオランダから輸入して、狂犬病の検疫のために
園内で6ヶ月間隔離飼育をしていたホッキョクギツネを
レッサーパンダの隣の施設に移し展示を始めました。
歴代のホッキョクギツネはとても華奢な体つきで、小顔でどこか気品がありました。
冬毛は見事に雪よりも白いほど真っ白で、
この小さな体で気温マイナス70度でも生きていける、
どこか神秘的でさえありました。

はるばるオランダからやってきたホッキョクギツネ、
厳重に改装した検疫用の隔離施設で初お目見え、皆目がテンになりました。
あの華奢なホッキョクギツネを想像していたのですが
輸送箱から出てきた姿はホッキョクダヌキ(そんな種はいません)か?
丸々とした骨太な体型小さいとは言えない顔、プヨプヨにたるんだ皮膚…
とても神秘的とは言い難い愛嬌のある姿をしていました。

ホッキョクギツネはヨーロッパ、シベリア、アラスカ、カナダと
分布域が広く多くの亜種があります。
ただし亜種による姿の差を明記したものは見あたりません。
こんなホッキョクギツネもいるんだね、みんなで強引に納得しました。
それでも見慣れてくるとこちらも洗脳されてきてホッキョクギツネらしく見えてきます。
肥満気味の体型も、徐々にダイエットをしてスリムになりました。
今はフワフワの白い冬毛が抜け落ち、
毛足の短い濃い灰色の夏毛に換わりつつあります。

始めて来園者にお披露目をした日の夕方、
これでまた寒さの素晴らしさを感じてもらえるんだと
見入っていたら、後の方で「アレ何?ずんぐりむっくりしてる」との声が…
僕は「…」。 

6月は、もう4年目になりますが天売島に海鳥の観察に行ってきました。
今年は例年よりもケイマフリやウトウの繁殖地の観察を入念に行いました。
合わせて野良猫の観察も。
天売島の島ニャンコは丸顔、
おしりプリプリでとても愛嬌のある個体が多いことが判明しました。
野良ネコ、野ネコが海鳥を補食する問題が発覚しているために
野良ネコ野ネコを馴致して里親を捜すプロジェクトが具体化しつつあるのですが、
こいつらの器量なら「いけるかも」と思いました。

これから夏本番です。皆さん短い夏を満喫しましょうね。

2013年6月30日日曜日

命をつなぐ (平成25年6月)

今年のゴールデンウィークは
自分の記憶にはないほどの悪天候で終始しました。
以降もパットしない天気でしたね。

それにしても5月の下旬になって桜が咲くなんて聞いたこともありませんね。
農作物やお米は大丈夫なのでしょうか?
僕たちの豊かな暮らしは土から生まれていることを
この時期に残雪を見ると切実に実感します。

大型草食獣館(仮称)ですが着実にその姿を表しつつあります。
ワクワクしてきました。名称は「きりん舎・かば館」でいかがでしょうか?
※先日この名称が正式に決定しました
シンプルでパンフレットにも表記しやすいし、
何よりもイベントなど案内時の園内放送でも
分かりやすいと思います。ひねりがなさ過ぎですかね…

秋のオープンに向けて楽しみにしていたのがキリンの誕生でした。
親子3頭での引っ越しを夢見ていました。
現在の施設でのやれることはすべてやり出産に備えました。

キリンの子は出産から2時間以内で起立し
母親の乳首に吸い付き授乳するのですが、
生まれた子は起立することができませんでした。
起立させる補助をしようにも、
母親が私たちが寝室にはいることを許さないため、
仕方なくどうにか母親を屋外放飼場に出し、
点滴、カテーテルでの授乳、保温を行い
夕方までにどうにか自力で起立できるまでになりました。
その間母親は外の放飼場にいましたが
盛んに扉の前に来て寝室内を気にしていました。

夕日が落ちた頃に寝室内で同居させました。
子は座り込んでいたのですが
母親は子の匂いをかぎ舐めていました。
育児を放棄していないことを確認し
一晩そのままにして徹夜で観察することとしました。

子は寝ている時間が長く
結局自力での起立、授乳には至りませんでした。
翌朝母親を外に出し、子の状態を確認しましたが、
想定以上に衰弱が進行していて回復させることができずに死亡しました。
寝室が2部屋しかなく、
親を夜間外に出しっ放しにはできないほど気温が低い中での
最善を尽くしたつもりですが残念な結果でした。
新居での新たな命の誕生を待つことになってしまいました。

そういえば、5月21日なんと園内でヒメギフチョウを見つけました。
こんなに遅くに、驚きでした。
ヒメギフチョウの寿命は1年ですが
その内サナギで約10ヶ月を過ごします。

4月下旬のほんの一時しか飛んでいる姿を見ないのですが
カタクリなどの花で吸蜜する姿はとても美しいです。
園内では在来種の植物をたくさん植えているのですが、
ヒメギフチョウの幼虫が食べるオクエゾサイシンも実はあります。
昨年は幼虫を3匹確認しました。
きっとその内の一匹なのかなと思うと嬉しくなりました。
写真を撮るのにちょっと捕まえてしばらく見とれて、
頑張れよと声をかけ放しました。

また幼虫見れるかな?

2013年5月31日金曜日

残雪の4月 (平成25年5月)

4月も下旬を迎えようとしているのに雪解けが進みません。
冬季開園が終わり、4月27日の夏期開園に向け
全員出勤で頑張っていますが、堆肥出しをするにも、
新たな土を入れるにも、遊具の補修、製作設置をするにも、
折れた人止め柵の補修をするにも
とにかく雪をなくさなければ始まりません。

一昔前の残雪から見れば少ないような気がしますが、
近年の雪解けの早さから見たら、うんざりする雪との格闘です。
ほっておいてもなくなるものとの闘いはどこかむなしい思いがあるのですが…
各獣舎とも担当者の新たな工夫が具体化しますので
是非足を運んでいただければと思います。

さて先日一泊四日(機中泊2日)の予定でボルネオに行ってきました。
強行日程でしたが、恩返しプロジェクトの本格的な成果になる
ルネオゾウの救助施設の第一期工事が完了し完成検査に行ってきました。
多くの企業の方々の協力を経ていよいよここまで来ました。

完成後はサバ州の野生生物局に引き渡し運用が始まります。
この施設は運用を通して改善点を探り
第2期工事に反映するための施設としての役割も持ちます。
マイナス気温からいきなり炎天下の30度を超える現場で
5時間過ごし帰路につきました。

ところがなんと機材の故障で予定の乗り継ぎで帰れなくなってしまいました。
帰国の次の日は北海道ブロックの園館長会議、
自分はブロックの代表理事、
穴を空けたら大変なことになります。
同じ便でクアラルンプールに帰る方の携帯で連絡をとってもらい
どうにか間に合う便を見つけ事なきを得ました。

自分はもう数年前から使っているガラケーでしかも日本でしか使えません。
やはりここはスマホかなと…
でもボルネオまで行って日常の仕事に追われるのもヤダな、複雑でした。
ともあれ園館長会議当日の朝に旭川に戻り無事会議も行うことができました。

夏期開園から北海道産動物舎も全面オープンを迎えます。
スタッフ皆が忙しくて嬉しい悲鳴が聞こえてくる
夏期開園にしていきたいと思います。

2013年4月30日火曜日

新年度へ向けて (平成25年4月)

暖かくなったり、雪が降ったり、
でも確実に雪解けは進み春の気配です。
総合動物舎の建て替えの仮称大型草食獣館の建設工事も、
不安定な天候の中確実に進んでいます。
それにしてもそろそろ仮称ではなく
正式な名称を考えなければいけませんね。
考えてみれば、昔からあるから不思議に思いませんが、
総合動物舎も何か分からない名前ですよね。

ちなみに総合動物舎はキリン、カバ、
ペリカン、ダチョウなどを飼育している施設で、
昭和42年の旭山動物園の開園の時からある建物です。
当時から旭山の中心となる施設でした。
現在は開園当初の建物は総合動物舎だけになりましたが、
昔の建物には小獣舎、小動物舎と言う名称の施設もありました。
今思えばこれも分かるようで分からない名前でしたね。

仮称大型草食獣館は、
現在総合動物舎で飼育している動物たちの引っ越しで、
結果としてほとんどがアフリカに生息する動物たちです。
アフリカ館、サバンナ館など候補はあるのですが、
今まで整備してきた施設に地域を現す名称がない…
地域ごとのエリア分けをして展示していない、
など考えだしたら分からなくなります。

現在の総合動物舎の近況ですが、キリンのまりも、
お腹が大きくなってきました。
今回は目立ちます。
予定日は幅があるのですが、初春の頃かなと考えて
安心して出産に集中できる環境を整えています。
順調にいって親子3頭での引っ越しになればいいなと思います。

カバのザブコですが、ご存じのようにザブコは旭山動物園開園当初から
ずっとあの場所で暮らしてきました。
足腰の衰弱が進み、寒い間は3日に1日外に出る生活パターンです。
餌も足を投げ出して寝ながら食べているのですが、寝室内のプールに入ると
浮力のおかげで足の負担が軽くなりまだまだ元気です。
引っ越しできるかなって慎重に様子を観察していきたいと思います。

ペリカンは今ととりの村の建物の中で越冬しています
(夏期開園から外に展示しています)
ダチョウとエミュウは元気に雪の中で過ごしています。

新居は秋に完成しますが、一番の大事は引っ越しです。
キリン、カバの引っ越しは一大イベントになります。
歩いて引っ越しにはならないので、大きな檻に入れて、クレーンでつり上げて、
新居に降ろして…今までに経験のない大がかりな作業になります。
今からそのシュミレーションをしています。

新年度も新たな取り組みが続きます。
振り返った時充実した年だったと思えるように頑張りたいと思います。

2013年3月31日日曜日

エゾシカの治夫 (平成25年3月)

エゾシカの治夫が死亡しました。
1994年の春に赤ちゃんで保護された個体でした。
当時は山菜採りで森に入った人が子ジカが一頭でうずくまっていたから
かわいそうに思い誤認保護するケースが年に数件ありました。
エゾシカは森の中でひっそりと暮らしているんだなと
珍しかったことを思い出します。

保護されたエゾシカは隔離室でお皿に入れたミルクを飲むように餌付け、
数日したらうらの草地や園内に散歩に連れ出し
さらに数日したら昔のエゾシカ舎に連れて行き
仲間入りの訓練をしました。

エゾシカは特にメスはよそ者を受け入れたがりません。
日中保護個体を同居させておくのですが、
追い払われて居場所をなくし柵の隙間から逃げ出し、
夜過ごす隔離室の前にいるということが続きます。
気長に繰り返すことで保護個体もエゾシカといる方が落ち着くようになり、
メスたちも受け入れるようになります。治夫もそんな保護個体でした。

治夫は成長し、たくさんの子を残し、新しいエゾシカ舎では堂々とした風貌で
たくさんの来園者を魅了しました。
数年前から角の枝分かれが正常ではなくなり、一昨年の秋の繁殖期には、
立派に成長した息子に遠慮するようになり
今シーズンは体力の衰えが顕著になっていました。
死因は老衰で見事に生を全うしたと思います。

治夫が生まれてから19年でエゾシカ史は大きく変わりました。
理由はどうであれ、町中に現れたエゾシカは保護し山に放し、
山の中では年間10万頭以上のエゾシカが無差別に駆除されています。

エゾシカほど北海道の四季折々の豊かさと厳しさを実感させてくれる動物は
いないのではないかとつくずく感じます。
体毛の色、角、鳴き声、群れすべてです。
エゾシカ舎のあべ弘士さんの絵が見事にそのことを現しています。
素晴らしいエゾシカとどのように共に暮らしていくのかが
見えなくなってしまいました。

治夫が保護された頃は、
エゾシカってこんなにつぶらな瞳なの、可愛らしいだけでもよくて、
まさか実はエゾシカが増えすぎてこのままでは農作物の被害だけでなく
自然そのものまで破壊してしまう存在です
なんて話をしなければいけなくなるなんて考えてもいませんでした。

ふと治夫のことを書いてみたくなりました。

2013年2月28日木曜日

雪明かりの動物園 (平成25年2月)

新年を迎え、昨年末から始まった雪と寒さとの闘いが続いています。
それにしても3日の吹雪には参りましたね。
出勤できた職員が力を合わせ最低限の雪かきを終え開園できました。

来園者は来るのだろうか?どうやってくるのだろうかと思っていたのですが、
この日1000人以上の来園者がありました。
その多くが観光客で、さすが旭川雪が多いですね!綺麗ですね!
とあっさりと言われて複雑な思いでした。
気候変動はこれからも続くのでしょう。
それにしても天気予報で雪マークがあると
札幌にさえ行くのがためらわれますね。
逆もまた同じなんでしょう。

さて、現在大きなイベントの準備に追われています。
もう雪はうんざりだねと言っていた昨年の末に、
職員の中から雪があるから心が温まることができないかなと
雪明かりの動物園との発想が生まれました。
どうせやるなら外に出る動機が強くなる冬まつり期間中にしよう!
とあれよあれよでやることに決めました。

夜7時まで開園、アイスキャンドル数百個に明かりをともし、
静かな冬、雪明かりの中で見る動物たち、ワクワクします。
が当然このための予算はないので大変です。
飼育も管理もなく全員でキャンドルの製作、
お客さんの対応をしようと盛り上がっているのですが
果たして行ってよかった!になったでしょうか。
やることが結果ではなく、
結果をとらえてさまざまなことに繋げていくことが
重要なのだと考えています。

秋にオープンした北海道産動物舎、
先日の朝オオワシが気持ちよさそうに水浴びをしていました。
気温は優にマイナス10度を下回っているのに…
外来種であるアメリカミンクの展示も施設利用の許可が出たので始めました。
飼育展示を予定していたアメリカミンクとアライグマは特定外来種と言って
飼育することに関して施設と共に許可を得なければいけないのです。

ミンクもアライグマもその動物だけを見ると素晴らしい生き物ですが、
北海道に定着し野生化することがどうして問題になるのか?
そのことに気付いてもらえる展示を目指します。

春になれば小型のフクロウ類や小鳥などの展示も始まります。
冬を楽しもうと言っておきながらなんですが、春が来るのが楽しみです。

2013年1月31日木曜日

新年のごあいさつ (平成25年1月)

みなさんあけましておめでとうございます。
年末の雨、年始の大雪と明らかに気候は荒々しくなっています。
エゾシカたちはどうしているのでしょう?ふと気になりました。

明治時代に日中雨が降り夜になって雨が雪に変わり寒波が入ってきて、
エゾシカが大量に死亡したとの記録があります。
濡れた毛が凍り防寒機能が働かなかったためです。
でも今回は動物園で飼育しているエゾシカでさえケロッとしていたので、
そんなことは起こらないのでしょうね。
今年度の北海道での人為的なエゾシカ捕獲駆除目標数は15万頭、
ただの殺戮よりも自然現象の中で
あるがままに調整される方がいいのは明らかでしょう。

今年は巳年ですね。身近にもヘビはいます。
当然園内にもいます。
でも驚くほど多くの人が身近にはヘビがいないと思っています。
昔、警察所から市内の住宅街でヘビがでて
捕獲したので保護して欲しいと依頼がありました。
床掃除用のぞうきんを挟むモップでヘビの首を挟み持ってきました。
アオダイショウでした。
ヘビは昆虫やカエルやネズミ類を食べる肉食動物です。
ヘビがいると言うことは
生き物たちの豊かな営みがそこにはあると言うことです。
そんな豊かさを感じるアンテナが
僕たちの暮らし方の中から消えつつあるように感じます。
動物園は、命を大切にイコール助けること、殺さないことではなく
全体の調和や全体の仕組みを感じる
心を育てる場でありたいと思っています。

ヘビとトカゲ、脚のないトカゲがヘビ、
でも脚のないトカゲもいる…ヘビとトカゲはどこが違うの?
ちょっと調べてみてはいかがでしょうか

ちなみに僕の今年の目標は、
ヘビのように揺るがない信念を貫くこと、です。
すべての生き物によい一年でありますように。
今年の干支ヘビ(ゲンちゃん画伯)