2012年10月31日水曜日

本能 (平成24年10月)

だらだらと続いた夏も終わり一気に秋の気配です。

今年の夏はフラミンゴのことがあって色々なことを考えさせられました。
コムケ湖で飛ぶフラミンゴの姿から
「自由に飛べて幸せなのだから捕まえなくてもいいじゃない」
一見そうなのですが、
逆に言うと動物園で飼育されている方が幸せではない、
と言うことになります。

動物園は、人間が造った場所に動物を閉じこめています。
動物園の存在の是非や飼育動物が幸せかどうかは
人によりさまざまな意見がありここでは触れませんが、
少なくとも命を預かっている立場として、
その動物らしく一生を送らせるための努力をしなければいけないし、
来園者には珍しいとか芸をする姿にではなく、
その動物のありのままの姿に感動をしてもらわなければいけないのだと考えて、
既存の価値感にとらわれずにさまざまな努力をしてきました。
今までもこれからもこのスタンスは変わりません。

飼育動物は、多くの能力を使わないあるいは使えない状態で過ごしています。
秘められた能力をいかに解放してやれるのか?
新たな施設を考える時のベースです。

フラミンゴに関してですが、集団性がとても強く、
一羽で隔離することですらショックを起こし命を落としかねない
とてもシャイで神経質な鳥だと認識していました。
脱走したフラミンゴが北海道という環境で
単独で逞しく生きていけるとは考えてもいませんでした。

鳥類は哺乳類に比べると学習ではなく
遺伝的に引き継がれる能力の比率が高い種が多いのですが
(例えばカッコウは一度も親の姿を見ることもなく
他種の鳥に育てられ巣立つのですが、カッコウになります)、
飛べたことで、
眠っていた本能的な能力が一気に働きだした結果なのだろうと思います。

まるで別の種の鳥になったかのようです。
特に警戒する能力の高さには驚かされます。
コムケ湖でどの生き物が危険なのかを知るはずがないのに
陸地には着陸しない、
アオサギの動きに連動するなど
見事なまでコムケ湖の生態系の中で生きる術を身につけています。

フラミンゴを飼育すること、ミンクを警戒して夜間は建物に収容していますが
繁殖のためには終日放飼場で飼育できるようにしなければ、
程度の課題意識でした。
フラミンゴはこんな鳥なんだとどこかで決めつけていました。

ただの美しいシャイな鳥としてではなく
もっと本質的な次元で飼育、展示方法を見直さなければいけないのだと
痛切に感じています。