2011年6月30日木曜日

目覚め (平成23年6月)

近年の中でもより早い雪解けだと思ったら、
4月下旬からいっこうに暖かくなりませんでしたね。
桜が5月中旬すぎてやっと満開なんて
記憶にないくらい遅かったのではないでしょうか。

虫や鳥たちのリズムにも影響があるようです。
園内では在来植物の定着、展示にも力を入れているのですが、
5月中旬すぎにヒメギフチョウが飛んでいました。
ヒメギフチョウの幼虫はオクエゾサイシンという植物を食べるのですが、
チョウの羽化、植物の成長、
産卵すべてが連動して遅い春となったようです。
さまざまな営みがちゃんと修正され
帳尻が合う程度ならばいいのですが、
最近の気候は乱暴になってきているのでちょっと心配です。

さて、ヒグマの子はスクスクと成長しています。
自由に転げ回って遊ぶ子供たちと、
それをしっかりと見守る母親の姿が印象的です。
春の山菜取りや釣りのシーズンになると
親子のクマには特に注意!と言われますが、
母グマの子グマに対する愛情や安全に対する気配りを見ていると
当たり前だとつくづく思います。
クマを危険な動物にしてしまうのは
ヒトのわがままな行動が原因なことが多いのだと改めて理解できます。

母親の「とんこ」は1999年4月30日に母親を駆除されて
当園に持ち込まれました。
当時まだ体重数キロの子グマでした。
「とんこ」が母親になり子育てをする姿が、
「とんこ」と「とんこ」の母親と同じ運命をたどるヒグマを
少しでも減らすことにつながってくれればと祈らずにはいられません。

シンリンオオカミも繁殖しました。
メスが巣穴にこもる時間が長くなり
「もう近い」のではと見守っていたところ、
5月6日オスの「ケン」の態度が明らかに変わりました。
いつもは寝室に入りエサを食べてから放飼場に出るのに
その日はエサを口にくわえ
放飼場に戻り巣穴にいるメスの「マース」に運んだのです。

以降「ケン」は頻繁にエサを埋めて隠し掘り出しては
「マース」に運ぶようになりました。
「マース」が「ケン」の口元を舐め
エサをねだる行動も見られるようになりました。
子が生まれ母性が目覚めるように、
「ケン」も父性が目覚めたのですね。
オスメスそれぞれがそれぞれの役割を果たしながら
子育てが続いています。
子が巣穴から姿を現す日が楽しみです
※5月24日から子が巣穴から出ている様子が見られています)。

オオカミの森が「ケン」と「マース」の営みの場になりました。
たくましく成長する子の姿を見守っていきたいです。
シンリンオオカミの「ケン」と子ども