2010年10月31日日曜日

「恩返し」第一弾 (平成22年10月)

例年にない残暑も嘘のように終わり、急に気温も下がり秋になりました。
皆さんは体調を崩されたりしていないでしょうか?

僕たちは残暑の厳しい9月2日から10日までボルネオに行っていました。
旭山動物園が取り組む「恩返しプロジェクト~ボルネオへの恩返し~」の
成果第一弾を届けるために。

このプロジェクトの最終目標はマレーシアサバ州に
ボルネオゾウを中心とした野生生物レスキューセンターを

設立し運営することです。
具体化するために寄附型の自動販売機を開発し
市内では園内を始め約60カ所、

道内、本州などでも設置箇所が広がっています。
たくさんの企業の方の協賛に本当に感謝しています。
この自動販売機からまとまった金額の募金が集まりました。

昨年ボルネオでアブラヤシのプランテーションに入り込んだゾウを捕獲し
ジャングルに返す作業に参加しました。
その際に使うゾウの移動用の檻が、

決して頑丈なものとは言えませんでした。
ゾウの捕獲作業に時間がかかり夜になってしまったため、

翌日にジャングルに返したのですが、
檻が壊れゾウにとってもヒトにとっても危険な状態での作業になりました。
現場では、安全で頑丈な檻が必要だ、

しかし予算的な問題や、田舎での材料調達、
溶接技術などの問題があって

現実は非常に厳しい状況なんだと話していました。

成果第一弾は、ゾウレスキュー用の檻にしようと計画をして、

設計をしました。
檻くらい簡単と思われるかも知れませんが、

ただ運ぶための頑丈な檻というわけにはいきません。

まず重量です。現地ではトラックに着いたユニックで作業をするのですが
ユニックで吊れるのは約3トンです。
檻の重量が軽い程、より大きなゾウのレスキューも可能になります。
檻の重量は1トンを目安にしました。
ゾウに破壊されない安全な強度を保つことが課題です。

次にメンテナンスです。
現地では溶接技術などが確保されていない場合が多いので、
檻はすべてボルトでの組み立て式とし、

パーツごとの交換でメンテナンスできることが課題です。

そしてもう一つ一週間程度の飼育が可能な檻にすることです。
治療が必要なゾウを想定しました。
檻越しに治療行為ができるように、

安全と強度を確保し隙間を空けることでした。
地元田島工業さんと協議を重ね檻が完成しました。

サバ州の野生生物局直轄のロカウィ動物園で檻の贈呈式を行い、
自分たちは立ち会えなかったのですが、

この檻でのゾウのレスキューが成功しました。
現在ボルネオで使用できる唯一の檻です。
サバ州では大きな話題となり

新聞は各紙一面トップ記事でした。
動物園にできること、動物園だからできること、

これからも具体化し続けていきたいと思います。
ゾウと檻(ゲンちゃん画伯)