2009年11月30日月曜日

命の受け継ぎ (平成21年11月)

更新が遅くなり大変申し訳ありません。

平成21年度の夏期開園も無事に終わりました。
来園者数は昨年度に引き続き減少が続きました。
いろいろと言われますが,僕自身の原因の分析としては,
あまりにも容量オーバーの来園者数が持続したことが大きいと考えています。

飼育動物に対して取り組んできたことと同じように,
今こそ来園者に対しても
しっかりとした取り組みをしなければいけないと痛切に感じています。
混雑しているイメージが変なかたちで定着してしまいました。
減ったとはいえ今年も容量オーバーです。
裏返すとこれだけの来園者を向かえ入れる体制が整っていないと言うことです。
皆さんにとって旭山動物園はどんな場所でしょうか?
いつの間にか「お客さんが来たら連れて行く場所」になってはいないでしょうか?

先日うれしいニュースが届きました。
神戸に嫁いだカバのナミコが4月17日に母親になったのです。
ナミコは旭山動物園開園以来飼育している
ゴンとザブコの娘(1992年生まれ)です。
ザブコは1963年生まれで1967年に旭山にやってきました。
以来ゴンとの間に11頭の子が生まれ7頭が無事に成長し
新たな飼育地に旅立っていきました。
カバは繁殖力が強く産児制限をしないといけない種の代表なのですが,
計画的に繁殖に取り組みたくさんの子を残すことができました。
ナミコは母親のザブコの足腰に衰えが見え始めた1992年,
旭山のあととりと考えて計画繁殖させた子でした。

話が前後しますが,ナミコの前に生まれた「メスの子」は
「あらできちゃった!」子でした。
厳冬期に寝室の修理が必要となり,
一日だけ放飼場でゴンとザブコを同居しました。
プールには水もなく,放飼場は雪が積もった状態でした。
カバは水中で交尾をする,それまでの常識が破られた記念日です。
まさか愛を交わしているとはつゆ知らずにいたのですが,
翌年(1984年)秋,ザブコの寝室のプールに大きな物体が浮いていました。
それが「メスの子」でした。
これは大変とあわててもらい先を探したのですがなかなか見つからず,
7才になりやっとペアーを組む相手が見つかり旅立ちました。
「メスの子」なのはチャンスがあればいつでも旅立つ子だったので,
愛称を募集しなかったからでした。

さてナミコですが,寝室がゴンとザブコ用の2カ所しかないために,
ナミコが大きくなってもザブコと同居させていました。
いつまでも甘えん坊で8才になっても母親のオッパイをねだり,
母親よりも早く移動し餌を独り占めにするようになりました。
ザブコはまずます足腰が弱ってきて,
ナミコの同居が重い負担になるようになってしまいました。
2003年,あととりを断念し神戸市王子動物園にお嫁に出すことにしました。

命がしっかりと受け継がれました。
飼育下での継代はたくさんの園館との共同作業で始めて実現できます。
ナミコの子の成長を遠くから見守っていきたいと思います。
いつか里帰りなんてこともあるかも知れません。
それとザブコにも早く新居をつくってやりたい…と思うこの頃です。
カバの親子(ゲンちゃん画伯)