2009年7月30日木曜日

エゾシカとの共生 (平成21年7月)

何かスッキリとしない天気が続いています。
週末ごとに見事に雨ですね。
今年はどんな夏を迎えるのでしょうか?

今は,秋のオープンに向けてテナガザル舎も全貌が見えてきました。
とても複雑な形の構造体なのですが

「コンクリートでこんな形を具体化できるんだな。すごい!」と
感動しながら,打ち合わせにも精が入ります。 

「エゾシカの森」もう見ましたか?
旭山動物園では,草食獣

つまり食べられる側の動物の本格的な施設は初めてでした。
同じ景色,同じもの,同じ音を聞いても,

食べる側の動物とは正反対の反応をする動物です。
新しい環境への適応は「時間が掛かるだろうな」と考えていました。
エゾシカの身体能力はとても高くて

平原から森の中,切り立った岩場までを生活圏にしています。

「エゾシカの森」ではそんな生活環境を凝縮して再現してあります。
エゾシカの森に引っ越したエゾシカたちは,

生まれて数日で保護されて十数年経つ親と
昨年生まれた子の7頭(6月に1頭生まれたので現在は8頭)ですが,
まったく起伏のないなだらかな斜面のエゾシカ舎で暮らしていました。
引っ越してすぐに落ち着いたのですが,

人工的に作った岩山の蹄に伝わる感触,
たとえ土の上であっても,

目線の位置が変わることで見える景色の違いなど,
なだらかな斜面以外の場所では,明らかに緊張していました。

エゾシカたちが新しい環境のすべてを安全なものと認識すること,
今まで眠っていた身体能力が徐々に目覚めること,
そのために岩山に登る目的を与え続けることを気長に続けてきました。

担当者の努力の甲斐あって,

自然な動きの中で自発的に岩山登頂に成功しました。
まだまだ眠っている能力はあるのですが,これからも楽しみです。

エゾシカを知らない人はいないと思いますが,

裏返しで,では何を知っているでしょう? 
エゾシカを有害獣にしたのは誰でしょう?

僕たちの暮らし方は,

例えば花を植えた瞬間にアブラムシが害虫に変わります。
エゾシカの森農園も始まりました。
私たちの暮らしとエゾシカの暮らしは両立できるのか?共存できるのか?
さまざまなことを皆さんに考えてもらえればと思っています。
電気柵とエゾシカ(ゲンチャン画伯)