2008年5月30日金曜日

ドラマ第3弾 (平成20年5月 番外編)

いつも、放送前に書いていたのに今回は…
放送翌日になってしまいました。
といっても書いているのは放送前なのでまだ見ていませんが。
今年は来春公開の映画のロケもあり、
まさに今現在も別のドラマのロケ中です。

早いもので、あれから3年もたったのですね。
旭山動物園は惰性ではなく今もしっかりと地面を蹴り
未来に向かい進んでいるつもりです。
みなさんから見てどうなのでしょうか?

今回も旭山動物園での動物の誕生や死、
それをしっかりと受け止める飼育係の姿をとおして、
見ている方に「生きる力」が伝わればいいなと思います。
もちろんドラマですからすべてが事実ではありません。
ただ旭山の信念をベースに物語は展開しているはずです。

これからは「多様性」「共存」
つまりたくさんの種類の生き物が命が共に生きること、が問われる時代です。
そのためにはまず我々人類がしっかりと大地に根を張り
「生きること」が前提です。
自分たちが「不毛の生き方」をしていて、
他の命を思いやれるはずはないからです。

今回のドラマでもたくさんの動物園でロケが行われました。
とてもたくさんの人や動物の協力でドラマは完成しています。
このドラマ、本当は旭山というよりは全国の動物園からのメッセージなのです。

動物園は人の価値観で作られてます。
その点では博物館、科学館や美術館と同じです。
「集める」「分類する」これは人類の特徴的な行動です。
ただ動物園が他の施設と決定的に違うのは、
動物園の動物は「生きていること」
「人の価値観で作られた施設で
人の価値観で生きていない動物たちを見てもらっている」こと
だと思います。

人類は「大切だ」と思うものを「守る」生き物でもあります。
どう「大切だ」と思ってもらうかが問われるのだと思います。
動物たちのありのままの生き方、姿に
尊さを感じ大切にしたい気持ちを育まなければと思います。
特に特定の価値観をまだ持たない子供たちには…

さて、ドラマも中盤です。
見終わってみなさんがどのようなことを感じたでしょうか?
僕は6月下旬オープンのオオカミの森完成を目指します。
そしてエゾシカの森の設計も同時進行しています。

明日も「頑張って生きてみますか!」
ハッピーの夢(ゲンちゃん画伯)

2008年5月26日月曜日

オオカミらしくを目指して! (平成20年5月)

例年になく早い雪解けを迎えた4月,旭山動物園は遅い冬ごもりを迎えました。
今年は4月8日から25日までのわずか18日間です。

前半は映画,ドラマのロケの対応,中盤からは獣舎の改修,
修理等々あっという間の冬ごもりです。
飼育係的には,雪割り作業が皆無に近く,共同作業も超順調で,
夏期開園に向けての取り組みもエンジン全開です。
どんな仕掛けや情報発信があるのか楽しみです。
でも雪が消えるのがこんなに早くていいのか?
こんなに早く芝生が緑になっていいのか?
一抹の不安がよぎりますね。

オオカミの森の建築も急ピッチで進んでいます。
もちろんオオカミたちも元気です。
オープンの時にお披露目する3頭は順調に旭山の風土に慣れつつあります。
3頭の来歴は,体毛が黒く不気味な雰囲気を持つカナダから来た1才の雄,
雌の兄弟と秋田市大森山動物園から来た

4才になるベージュ系の体毛の雌1頭です。
最大の課題は兄弟の黒い雄とベージュの雌がペアーになるかどうかです。

しっかりとした絆を持つペアーになれば

兄弟の黒い雌はベージュの雌の下の位となり
発情は抑制されて兄姉婚は起きません。
これがただ単に多頭飼育ではなく
オオカミとしての社会性のある群れ(パック)としての飼育になります。
「オオカミらしい生活」の出発点です。

ベージュの雌はある動物園に4年前に輸入されてきたのですが虚弱で
他の個体と一緒に生活することが困難でした。
他の個体からの攻撃を受け左前肢の指の欠損,機能障害が残りました。
大森山動物園に行ってからも特定の個体とは同居できたのですが,
群れに入ることはできませんでした。

「なぜそんな個体をあえて選んだの?」

それはオオカミの繁殖能力の強さに原因があります。
ある動物園でオオカミが繁殖すると

その子供は別の動物園にもらわれていきます。
毎年数頭の子が生まれますから,

その繁殖ペアーの血統が動物園界に広がります。
子供たちがもらわれた先で

血縁のない個体と新たなペアーを組み繁殖しても,
やはり孫同士は血縁があり,

近親交配を避けることができなくなってきます。

旭山で,黒い雄とベージュの雌がペアーとなってくれたら,
日本には血縁のない新たな血統が生まれます。
飼育下で繁殖を維持し,種を維持するのは実は大変なことです。
旭山で飼育するのは一般的にシンリンオオカミと言われている種です。
国内で血縁のない3系統のペアーがいます。
うまくいけば3代目までは種を維持できます。
一般的に動物の輸入は困難になりつつあります。
どのような種でも

国内で「うちだけ」でしか飼育していない種の未来の展望は明るくありません。

旭山の施設もオオカミもこれからです。
オオカミの表情(ゲンちゃん画伯)