2007年5月26日土曜日

オオワシのヒナ(平成19年5月)

冬期の開園期間が終わり,平成19年度の開園準備です。
例年だと今時期(4月13日)は,雪と格闘している時期なのですが,
今年はもう雪がありません。
楽です。
でもこうも早く雪がなくなってしまっていいのでしょうか?
カモなどの水鳥を展示している「ととりの村」の池の水は,
沢水が頼りです。
例年だと無限にあるかと思われる水量のはずなのが,
今年はもうなくなりそうです。
楽ですなんて呑気なことを言っている場合ではないのかも知れません。
 
頻繁に耳にする「温暖化」ですが,
最近になって「深刻な水不足」を心配するニュースが目立つようになってきました。
日本のように水の少ない国では,雪解け水は生命線です。
田んぼの水,私たちの生活水,そして雪解けと共に一斉に目覚める
木々や動物たちの命の水…として。
予期していない深刻な状況が連鎖して起き始めなければいいのですが。

さて,昨年度の締めくくりと,
今年度の最初の繁殖動物は両方ともオオワシでした。
今年度最初はオオワシかアザラシかで,
僕らの間では毎朝の話題になっていました。
4月5日にオオワシが孵化して,担当者はニコニコしていました。
飼育係みょうりに尽きますね。
多分旭山動物園初だと思います。

オオワシの繁殖については報道もされたのですが,
どうしても関心は日本初の人工繁殖のほうに行ってしまいがちでした。
園としても担当者としても「日本初」を目指したわけではなく
本来の目的は別にあっての人工繁殖でした。

今回繁殖したオオワシのペアーは2年前に自然繁殖に成功しています。
自然繁殖とは親鳥が卵を温め,卵を孵し,
雛を育て,巣立ちさせることを言います。
このペアーは年に一度の繁殖期に一卵しか産卵しません。
つまり一年に一羽しか増えないのです。
野生下での絶滅が現実味を帯びてきた場合,将来の野性復帰に備え,
飼育下での個体数の増殖が重要になります。
ところが繁殖数が少ない種の場合,増殖が思うようにいきません。

鳥類は一般に,産卵後間もなく何かのアクシデントで
卵が割れてしまうなどした場合,数日後に再度産卵をします。
これを補充卵と言います。
この習性をうまく利用できれば親鳥に無理をかけることなく,
1羽の繁殖を数羽の繁殖につなげることができます。
今回は産卵後に巣から卵を取り3卵目までを孵卵機に入れ,
4卵目を親鳥に任せることができました。
このことが実は未来につながる大きな成果でした。

何事も地道な取り組みの先に未来が見えてきます。
オオワシのヒナ(ゲンちゃん画伯)

2007年5月16日水曜日

ドラマ再び(平成19年5月8日)

昨年放送されたドラマの続編となる「奇跡の動物園2007」が放送されます。
僕にとってもここ3~4年は激動の時代で,
平成16年のあざらし館がオープンしてからはとまどうことの連続です。

それまでは僕たちの「思い」をとおして
来園者とともに未来に向かって歩んでいる実感をもっていました。
たくさんの歯車がしっかりとかみ合っていました。
月間の入園者数が日本一になってから
「旭山動物園」が一人歩きを始めました。
変な言い方だけど
自分たちの手の届かないところに行ってしまったような,
自分たちの思いとはかけ離れたところに行ってしまったような,
大きな波にさらわれたような,
漠然とした不安が常にどこかにありました。

たとえほんの小さな歯車が
一つうまくかみ合わなくなっても全体が影響を受けます。
新たな歯車を加えようとしても全体のバランスに影響が出ます。
今はたくさんの歯車を修理したり再構成したりして,
未来に向かっていけるパワーを,旭山らしさを自分たちがしっかりと実感し,
確認しながら,新たな旭山を創る時期なのかもしれません。

ドラマでは俳優さんも前回と同じ方が同じ役をされていて,
さらに新たな俳優さんも加わり
内容に厚みが出たように思いました(まだ見てないけど…)。
僕的に一番びっくりしたのは戸田恵梨香さんが一年前よりも,
さらに 立派な女優さんになっていたことです。

最初に旭山動物園に来られたとき
ペンギンの散歩を一緒にしたりしたのですが,
まだあどけなさがあって,どちらかというと「よく来たね,しっかり頑張ってね!」
だったのですが,今回のロケでは近寄りがたい雰囲気を感じました。

変わったのではなくて,
確実に戸田恵梨香さんとして存在が大きくなったと感じたのです。
そのときふと,旭山動物園も同じなのかな,と感じました。
ちょっと寂しい気もしますが,軸をぶらすこと無く成長した結果なのだから
すばらしいことなのでしょう。

今は未来のために,そう信じて今年も頑張りたいと思います。
マルミミゾウのナナ(ゲンちゃん画伯)