2007年4月26日木曜日

キーボその後(平成19年4月)

チンパンジー館で「キーボはどうなったの?」とよく聞かれます。
キーボは息子のシンバに闘争によりその地位を奪われました。

キーボだけを単独飼育とし,今後を考えていました。
原因となったミコの発情が終わり,
檻越しにキーボの対面を数回試みてみました。
キーボは明らかに臆病になっていて,
檻越しに特にミコを気にしながら手や唇を突き出して
みんなと挨拶をしていました。
これを繰り返せば,群れ復帰もあり得るかと思われたりしましたが,
突如ミコが威嚇をし,つられてシンバが興奮することがあり,
群れ復帰は断念しました。

しかしシンバの群れにするには大きな問題がありました。
シンバが群れを率いるとなると,
シンバの母親フルト,姉イブが同居することになります。
将来発情が来るとシンバが交尾してしまう可能性が高くなります。
発情の期間だけキーボと同居させることは可能なのですが
シンバとの交尾を完全には防ぐことはできないかも知れません。

さらに,母親フルトの6才になる息子ピースケ(シンバの弟)が,
去年生まれた「たける」の面倒を見るのはいいのですが,
遊び方が過激になり「たける」の生傷が絶えない事態になってきました。
さらに2月4日にイブが出産しました。
シンバは若いことと,リーダーとしての未熟さから
群れを統率すると言うよりは勝手放題といった面が見られ,
群れ全体が不安定になる要素もありました。 

そこで,フルト,イブと赤ちゃん,ピースケを
キーボと一緒にすることにしました。
二つの群れに分けることになります。
一度に展示できる個体数が減ることで,
群れ社会や豊かなコミュニケーション能力が
来園者に伝わりにくくなりますが,
これ以外は問題はないと思われました。
キーボもフルトたちもお互いを拒むことはなく同居は順調です。
 
現在は,シンバも落ち着き,
それぞれ5頭ずつで安定した生活をしています。
キーボは昔のような血気盛んで
猛獣のような一面は影を潜め穏やかになりました。
野性下では通用しないのでしょうが,
動物園で一生を送るのだからこれで良かったのだと思っています。
キーボ(ゲンちゃん画伯)