2005年12月28日水曜日

共に生きる (平成17年12月)

カピバラが無事に出産しました。
仔は3頭で順調に育っています。
冬期開園中は皆さんに観ていただけなくて残念ですが…
そう言えば前はカピバラ沢山いたのにどうしたの?とよく聞かれました。
くもかぴ館オープン前に全てほかの園に貰われていったのです。

年に2回も,しかも多産なので
生まれるのはうれしいのですが後のことを考えると…
となる場合が多くて
繁殖制限をしなければいけなくなることがあるのです。
このような動物を業界用語で「余剰動物」と言います。
でも今は「旭山生まれ」はモテモテです。
器量よしです。

先日,九州で動物園・水族館の関係者が集まって
「種保存委員会」が開かれました。
いわゆる希少種を含めた飼育動物の血統管理や
飼育下個体群の維持について,
国内希少動物の飼育下での繁殖や
野生復帰についてなど真剣な討議がなされました。
特に私が担当している猛禽類については国内希少種が多く,
環境省とも真剣な協議が行われました。

どの種でもそうなのですが,
我々は「野生動物」としてどのように保護に関わり,
来園者に普及啓発ができるのかを考えています。
先日,コウノトリの野生復帰が行われて
大きな話題と期待を集めました。
一度絶滅させてしまった動物を復活させるための
地域住民の血のにじむような努力は
並大抵の物ではなかったと思います。
人間が自分たちの快適さや
利益を追求した結果絶滅させたのですから,
彼らと新たに共存をはじめようとすることは,
今まで私たちが手に入れてきた物をコウノトリに譲り,
彼らのための環境を整えることを意味します。
一度手に入れた物を自らの意思で失うことは大変なことです。
この歴史的な一歩に敬意を表したいと思います。

一方で野生動物や国際的に厳重に保護されている希少種を
ペットのように扱うテレビ番組が支持を受けています。
アザラシが現れると住民登録です。
ありのままの彼らではなく,かわいらしさなどの
我々にとって都合のいいところだけを見たり紹介したりしています。

今,ツシマヤマネコをどのように保護していけるのかを
関係機関が知恵や汗を絞り模索しています。
「人間のルールに引き込んで」でいいのなら
ペットとして「一家に一匹ツシマヤマネコ」で種は保存されるでしょう。
もし生長して手に負えなくなったら
専門の飼育施設にでも引き取って貰えばいいのです。

我々はくどいですが「野生動物」としてのツシマヤマネコを
守っていかなければいけないと信じています。
そこには莫大な経済的な負担や不便が生じます。
その動物が棲む地域だけの問題ではなく,
日本社会として「守ろう!」と
協力していかなければ守れないところまで来ています。

豊かな国「日本」何が豊かになったのでしょう?
もしかしたら代償として失いつつあるものの方が
かけがえのない物かもしれません。