2004年12月29日水曜日

動物園からのお年玉(平成16年12月)

さて冬期開園が始まりました。
やはり昨年の倍以上のペースで来園者が増えています。
でも多いと言ってもあざらし館に行列ができるほどではないので
足が遠のいている方ぜひ来て下さい。

僕は小樽に住んでいたのですが
運河の再開発が行われる前はとても住みやすくて大好きでした。
運河がきれいになって北一ガラスがメジャーになって
観光客が大量に押し寄せて急激に町が変わってしまいました。

町の活性化はうまくいったのでしょうが、
地元の人たちは決して手放しでは喜べなかったのです。
今の旭山動物園どこか似ているような気がします。
旭川の自慢になるには、
地元の人にこそたくさん来てもらえるようにしなくてはいけませんよね。
経済的な面からや驚異の成功例みたいにとらえられることが多いのですが、
僕たちの本来の目標はそれではないのですから。

実は今12月末完成を目指して
寄附でいただいたお金で
オランウータンの室内展示場とトイレを建築しています。
工期が短いこともあり超難工事になっていますが、
「旭山らしい」できばえになりそうな手応えを感じています。

形ができてきて「自分がまず遊んでみたい!」と思えたから。
もちろん冬期間も見ることができる施設です。
同じ年度内に2つも新しい動物舎ができるなんて初めてのことです。
「オランウータンは地面のない樹上で生活している動物なんだ」がテーマです。
ジャックがリアンがモモがここでどのような秘められた能力を
開花させてくれるのか楽しみです。
一月中旬にはお披露目できそうです。
楽しみにと大きな声で言いたいところですが、雪が積もると駐車場が…。
「来て下さいって言っておいて,受け入れ態勢ができてないじゃない!」
とまた叱られてしまいそうですね。

そう言えばもう年末年始なんですね。
ウータン舎は動物園から皆さんへのお年玉になるのでしょうか、
「期待以上」になるといいなと思います。

皆さんよいお年を。
オランウータンのジャック

画:ゲンちゃん

2004年11月29日月曜日

動物園はなぜ必要なの?(平成16年11月)

想像もつかないことの連続の夏期開園が終わりました。
122万人という数字は正直とんでもない数字でした。
冬期開園はどうなるんでしょう?

9月19日にホッキョクグマのカンゾーが死亡しました。
ほっきょくぐま館のオープンに合わせて来園した個体でした。
高齢でしたが、立派な体格で
これぞホッキョクグマという威厳のある容姿をしていました。

実はカンゾーの名前の由来は性格がきかないので
「きカンゾー」でもあったのですが、
来園時からの血液検査で肝臓の機能が低下していての
「カンゾー」でもあったのです。
飼育下では飛び抜けて高齢だった個体なので、
漢方薬などの肝機能改善薬を常用してきました。
僕たちの中ではいつ逝ってもという覚悟はできていました。
8月の夜の動物園から体調を崩し、
肝機能に加え腎機能も著しく低下し始めました。
動物園で飼育していても野生動物です。
人に触られる、吹き矢で麻酔をされることは何よりも苦痛です。
老衰で治癒の見込みがないと判断したので、
最後に苦痛だけを与えて最後を迎えさせることは避け、
無理な治療はしませんでした。
 
ホッキョクグマは野生下では2万頭前後の生息と推定されています。
当園の連休の中日の入園者数です。
地球上にこれだけです。
緊急に絶滅の心配はないとされていて、
輸出国の許可さえあれば輸入することは可能です。
しかし特に日本には輸出国の許可がおりません。
その理由は本来の生息地から
わざわざ持ち出すことをしない方針もあるのですが、
日本は動物を見せ物にして、ろくに繁殖もさせずに「消費」しているとの
痛烈な批判があるからです。
日本に輸出することへの国民の理解が得られないのです。

しかし、なぜ日本でホッキョクグマを展示しなければならないのでしょうか?
もっといえば動物園はなぜ必要なのでしょうか?
そのことを真剣に考え反省しないと
日本の動物園の将来は見えてこない気がします。 
カンゾーがいなくって、
アザラシ目線のカプセルのある放飼場にはコユキ1頭になりました。
元来クマは単独生活なので
カンゾーがいなくなってもコユキはケロッとしています。
でも展示効果としてはピンチです。
コユキもおばあちゃんでカプセルから人が顔を出しても知らん顔です。
でも心配はご無用です。
ちゃんと新しいニューフェイスが来園しました。
今いるハッピーの姪にあたるルルです。
旭山の血筋です。
若いので将来を考えてイワンと一緒にしようと考えています。
そしてハッピーをコユキの放飼場に馴らしていこうと思います。

この手紙の頃にはお披露目されているかな?

ホッキョクグマのイワン

画:ゲンちゃん

2004年10月29日金曜日

日本の常識、非常識?(平成16年10月)

9月は来園者90万人と100万人をあっさりと達成してしまいました。
あの台風の日に800人近くの来園者があったのには驚きました。
「今日はすいててゆっくり見られるわ」
のんきにしゃべっているのには「・・・」でした。
幼稚園などの団体まで来ていて、
子供たちが強風に怯えていて「・・・」でした。
とにかく100万人は夢の数字としてとっておきたかった数字です。
本当にいつかそんな日が来るのかも・・・
もっと大事にしておきたかった気がします。

さて、オランウータンです。
日本では雄親と、母子を一緒に飼育することは一般的ではありません。
野生での単独生活という習性や、
同居して子供が殺されてしまった話や見た目の体格差や、
とにかく一緒には飼育できないという固定観念がありました。
ところが欧米では同居が当たり前です。
出産の時すら雄を同居させたままとの情報を得ました。
僕たちは野生でも雄と母子が出会わないわけはないし、
他のサル類のような父子のコミュニケーションはないにしろ、
同居は不自然なことではないのではないだろうかと思っていました。
モモが生まれて約一年半、
午前中にジャックを
午後からリアンとモモを放飼場に出していましたが、
外に出ている時間が短く、
とくにジャックはリアンに会えないこともあってか
いらいらしていることが多くなっていました。
「ならば」と一緒にすることにしました。

寝室内でのお見合いの後、9月5日朝8時、
まずリアンとモモ次いでジャックを放飼場に出しました。
リアンはちょっとビックリして間合いをとります。
ジャックはリアンのすばしっこさには
ついていけないことを自覚しているので、
興味津々なのですが追いかけません。
そしてジャックとリアン最初の同居の時のように
「いじけ作戦」を開始しました。
小さくなっていじけているジャックを見て
リアンはモモを抱っこしたままじわじわと近寄ります。
目と鼻の先まで近寄ってもジャックはじっと耐えています。
「僕は何もしないよ」目が訴えています。
でも耐えきれずに手がピクリ、リアンはサッと離れてしまいます。
ジャックはロープや木に八つ当たりをして、
気を落ち着けてまたいじけ作戦です。
そんなこんなで同居は成功しました。
やはり父と子、父と母と子といった
コミュニケーションは見られないのですが、
ジャックは満足のようです。
リアンもジャックのそばではモモを自由にはしませんが、
ジャックのそばで微妙な距離を保ちながら寝そべったりしています。

オランウータンは考えてから行動するので
心理分析をしながら見ていると飽きることがありません。

最近ジャックが「何か」考えていそうで目が離せません。

オランウータンのリアン

画:ゲンちゃん

2004年9月30日木曜日

タミオの死(平成16年9月)

8月18日キリンのタミオが老衰で死亡しました。
21才でした。
1才で旭山動物園に来たので20年旭川で過ごしたことになります。
僕が旭山動物園に来たときから居たので、
気候の変化が激しい旭川で
熱帯産動物を飼育する技術を一から教えてくれたのがタミオでした。

タミオはメスのマーナとの間に4頭の仔をもうけました。
99年にマーナが死亡してからは1頭で飼育していました。
タミオは亜種不明のキリンで、
「種(遺伝子)の保存の観点から、
亜種の分かっている動物を計画的に繁殖させ、
展示していこう」と言う動物園界の方針もあって
マーナの死後、新たなお嫁さんを迎えることはしませんでした。

しかし一頭になってからは運動量も落ち
たたずんでいる時間が長くなりました。
今年に入り食欲はあるのに痩せが目立つようになってきました。
また好みにも変化が出てきました。
旭山動物園では餌を与えながら
動物の解説をするガイドを頻繁に行っていますが、
去年までのタミオは、木の葉や野菜類ならば好んで食べて
バナナなどの果物を与えても食べようともしませんでした。
「キリンは本来、高いところの木の葉を食べる動物なんだね、
長い舌で葉っぱを巻き取って食べるんだね」と話をしていました。

ところが今年の春からはバナナやオレンジなどアレッと思うものを
なんでも食べるようになりました。
主食で与えていた大好物のクローバーにもあまり口を付けずに、
敷きわらに使っている乾草をわざわざ食べるようになりました。
野生種の動物はとても保守的です。
行動も食べ物にも一度安全だと分かったものに固執します。
生き抜くための本能です。
好みの激変は生命力の衰退の兆候です。

そして7月22日放飼場で倒れました。
自分の力で起立ができない状態でした。
「ついに来たか…」一瞬頭をよぎりました。

しかし,カルシウム剤などの大量投与、職員総出で首を起こし,
お座りの状態にして本当に奇跡的に立ち上がらせることができました。
タミオはその日から寝室で座って寝ることをしなくなりました。
これまでは毎日座って寝ていたのに。
人に触られた恐怖と、「座ったらもう二度と立ち上がれない」
タミオには分かっていたはずです。

僕はいかに安らかな最後を迎えさせられるかを考えていました。
でもそんな心配はいりませんでした。
8月18日朝、タミオは寝室で横たわるように死んでいました。

僕たちはタミオを通してキリンの素晴らしさ、
かけがえのなさを伝えられたのでしょうか?

キリンのタミオ

画:ゲンちゃん

2004年8月30日月曜日

野生動物保護活動の実態(平成16年8月)

さて7月も中旬を過ぎて夏本番です。
連日たくさんの来園者があり、
その数は僕たちの予想をはるかに上回っています。
この手紙の頃には結果が出ているでしょうけど、
月間の入園者数日本一が現実味を帯びてきています。
すごいことなのですが、
まだ日本一になるにはいろんな面で分不相応な気がします。
もう少し時間をかけて実力を蓄えてから
達成できた方がいいと感じています。
旭山動物園の名前が、
現実とはどんどんかけ離れて一人歩きを始めているような、
地に足がついていないような、
漠然とした不安が最近はいつも心の中にあって落ち着きません。

話は変わって、旭山動物園は昔から傷ついたり弱ったりした

地元の野生動物の保護活動を行っています。
数年前からは、金額が少ないので
数ヶ月間は「北海道」からの委託契約で行い、
残りは昔からのボランティアとして行っています。
本来野生動物は、都道府県が責任を持ち管理することになっていて、
傷病鳥獣についても動物愛護の精神から
やはり都道府県がしっかりとした考え方を基に保護活動をすべきです。
しかし、「道」の場合は保護収容施設を持っていないため、
委託事業として傷病鳥獣の保護活動を行うことにしました。
内容は市民などに保護された個体は、
まず鳥獣保護員や地元の獣医師に運ばれ(一次収容)
その中で長期の治療が必要な個体や野生復帰が見込めない個体について
動物園(二次収容)に持ち込まれるネットワーク事業です。

しかし、実際にはほとんどが直接動物園に持ち込まれています。
僕たちは本来、「道」がしっかりとした保護収容施設を持つべきだと思っていて
今は過渡期だと位置づけていました。
ところが「道」は、「これでいい」みたいなところがあって
最終的には動物園や心ある獣医師などが
ボランティアでやってもらえると見ている節があります。
今年は鳥インフルエンザのこともあって、
短期間とはいえ契約の内容について契約を始めた当初からずれてきている部分や
改善したい点について協議しました。
まずは、当初するといっていた土日対応についてです。
本来は上川支庁が窓口になり、
保護した方に「どこどこの一次収容施設に持っていって下さい。」
等の指示をするべきです。
ところがこれは「できません」。
次に持ち込まれた個体の血液検査や病原菌の検索、
死亡原因の究明などについて
「道」が責任を持ち経費も負担して欲しいとの協議には、
「委託契約でお金を払っています。
必要と考えられる検査はそちらで行って下さい。」との回答。
感染症などを防ぐことに意識が全くないようです。
ということで今年度は契約を結ばないことにしました。

今後の経過についてはまた報告します。

トビ

画:ゲンちゃん

2004年7月30日金曜日

「ひらめき」と「のり」でつくったあざらし館(平成16年7月)

さてあざらし館は無事にオープンしました。
ぺんぎん館でもほっきょくぐま館でも経験したことのない入園者の増加です。
気持ち悪いくらいです。
マスコミの力はすごいものなのかもしれません。
正直どこの動物園でも水族館でも脇役のアザラシを、
ペンギンやホッキョクグマと同じような主役級に押し上げられるように
アザラシの魅力を伝えきれたのか、
またそう見てもらえるのか不安でたまりませんでした。
地元の生き物を、相変わらず顧みない日本の動物園界に、
大きな一石を投じられるのか。
また「ラッコじゃないよただのアザラシだよ。」
と言う価値観を作り出した動物園や水族館に
「見てみろ!」と言いたくて気合いが入っていました。
とは言ってみたものの
これは後になって考えて見たらこういう気持ちだったのかな…
なのかもしれません。
実は「自分の見てみたい。」を
無邪気に現実の形にしただけなような気がします。
 
社会の中で生きていると知らず知らずのうちに
常識に縛られて生活しているものです。
何でこれが常識なのかも考えずにいます。
いつの間にか、みんな無難なところに落ち着きます。
動物園のデザインもそうです。
ここ10年くらいは、どうしてここまでコピーばかりあふれるのかと思っていました。
切り口が皆同じなのです。
なぜ冒険をしないのかと。
みんな同じじゃつまらないし、疑問に思わないのか不思議でした。
僕は普段から常識がないようで、そしてあまのじゃくなところがあるので、
理論や無難に収めるのではなく、
ひらめきや感覚的なところでアイディアを思いつきます。
しばしば「どこを研究してあざらし館を建てたのですか?」と聞かれるのですが、
実はほとんど他の施設を調べたりはしていません。
ただ、本州の水族館で深い水槽の中を
垂直に滑るように潜るアザラシの姿が印象にあって、
縦になって移動できる水柱は「いける!」と言うひらめきと、
3Dのホログラムのような不思議な見え方も「いける!」と思ったのです。

アザラシにも来園者にもいいことづくめじゃないですか。
理詰めではなく「のり」でここまできてしまったようなところがあるのですが、
変に理屈をこね出すと旭山らしさがなくなってしまうかもしれません。
これからも無邪気に楽しくやっていかなければ…と自分に言い聞かせています。


ゴマフアザラシのハム

画:ゲンちゃん

2004年6月30日水曜日

あざらし館オープンに向けて(平成16年6月)

この手紙がつく頃、今年度最大のメインイベント「あざらし館」が
よっぽどのことがない限りオープンしているはずです。
今、オープン3週間前なのですが、
この頃から悪いことばかりが頭をよぎるようになります。
この前は浮かべてある漁船が沈没している夢を見ました。
不安のタネがいっぱい見つかるのもこの頃からです。

もうあざらし館は全てできていて、アザラシの引っ越し、
海水魚の手配、手作り看板の作成など最後の作業に取りかかっています。
まだ一般開放されていない今だけが、自分だけのあざらし館です。
夜、水中照明をつけて、アザラシを眺めています。
何時間居ても飽きなくて、
こんな贅沢いいのかなって思いながら時間が経ちます。
考えていたようにアザラシが楽しそうに泳いでいて、
水槽越しに目が合う瞬間がたまりません。
なんか言いたいのかな…なんて動物園人らしからぬことを思ったりします。
正直みんなのものになってしまうのが、ちょっと寂しいなって気分に浸っています。

さて、あざらし館で飼育的に最大のチャレンジは、魚とウミネコとの同居です。
テトラポットの隙間に魚が隠れていて、たまに出てきた魚をアザラシが追う、
漁船の縁にはウミネコがとまっている。
そんな当たり前の風景を再現したいと考えたからです。
魚の同居は水の管理がうまくいくかが勝負です。
僕たちが泳ぐプールのように、きれいにするだけならば問題ないのですが、
塩素が多いと魚は生きていけません。

そこで熱帯魚を飼育するのと同じような
生物ろ過を取り入れたシステムにしました。
先日、試験的にウグイを放したのですが、
当然アザラシに追われて命を落とすものもいたのですが、
テトラポットの隙間に逃れたものも多数居ました。
そして1週間が過ぎても、ウグイは生存しています。
ウグイがすめる水ができたのです。
しかもアザラシが見えなくなると泳いで出てくるのです。
ウグイの補充はみんなで釣ってくる作戦です。

もう一つのウミネコ同居は、これから取り組みます。

はたしてオープンの時に同居が成功しているでしょうか?

ゴマフアザラシのハム

画:ゲンちゃ

2004年5月30日日曜日

鳥インフルエンザ(平成16年5月)

今回は、あまり気が進まないけどやはり鳥インフルエンザのことを書きます。

問題の鳥インフルエンザは正しくは高病原性鳥インフルエンザで
鳥ペストって言っている伝染病です。
家畜伝染病予防法では法定伝染病に指定されていて
ニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥には治療を行わず、
速やかに処分して病原体の撲滅を図ります。

一口に鳥インフルエンザといってもたくさんのタイプがあって、
現在問題になっているのはH5N1型です。
1997年に香港で初めて確認された新顔です。
去年から今年にかけて大流行して、
世界で数千万羽のニワトリが死亡あるいは処分されています。
経済的あるいは「食」に対する重大な脅威です。
さらにニワトリだけではなく、ワシタカ、フクロウ、
コウノトリの仲間、カラスなど
分類学上距離のある鳥類にも感染力があり、強い病原性を持っています。

このことが感染症を防ぐことを難しくし、
動物園としても重大な危機感を持つところです。
そして社会的な不安の原因は、ごく希ですがヒトへの感染が認められ、
致死的な病原性があることでしょう。

日本の衛生環境ではまず起きえないでしょうが、
このウイルスは自己修復機能がなく、
容易に変異する特徴を持っています。
もしこのウイルスが同じ仲間の人インフルエンザウイルスと出会い、
人同士で感染するタイプに変異したら、
想像も出来ない悲惨な事態になるとWHOでは考えていて、
厳重な監視体制を敷いています。

何で、今降ってわいたように?それとも、やっぱり野生動物は怖い?
僕は人間が生み出した怪物だと思います。

過去にヒトで大流行したインフルエンザは
鳥型と従来の人型ウイルスが
家畜のブタに感染し変異したためと考えられています。
今回は経済的な成長が著しい中国や東南アジアで大発生しました。

インフルエンザはもともとはガンやカモの仲間の腸管の中で生きている、
彼らには病原性のないウイルスです。
ごく希に他の種類の動物に感染したり、強い病原性を持ったりします。

富を優先するあまり衛生面やニワトリの健康に配慮しない
無秩序な大量飼育などは、
ウイルスにとっては信じられないような新天地です。
彼らは水やアヒルをとおして侵入してきました。
そして驚異的な感染力と病原性を持った怪物が生まれたのです。

近年のエボラ出血熱やBSE、SARS、
そして高病原性鳥インフルエンザ、
ヒトのおごりに対する強い警告のようにも思えます。
最後通告に近づいているように思えてなりません。

旭山動物園ではウイルスの侵入を何が何でも食い止めるために、
万が一の可能性を考えて、傷ついたり弱ったりした野鳥の保護活動、
アヒル、ニワトリのふれあいを一時的に止めました。

少なくとも、今後数年間は、
冬が来るたびに僕たちはこの怪物に怯えなければいけないのです。


ニワトリ

画:ゲンちゃん