1998年9月30日水曜日

もうじゅう館part1(平成10年晩夏)

新しいもうじゅう館、ご覧になりましたか?
あの建物が実質3ヶ月半で出来たとは今でも信じられません。
扉の開閉の仕方から全てが普通じゃない建物を
ああだこうだと打ち合わせをしながら、
オープン10日前になってもコンクリートを打っていたんですから。
 
完成が近づくにつれ、
僕の頭の中は「万が一逃げないだろうか?」それ一色になってきました。
なにせ誰もが認める猛獣ライオン、トラ、ヒグマを
天井のない檻で飼おうというのですから。
トラが逃げる夢を見ること十数回、
なぜトラかと言うと、トラプールの壁の高さが3メートル、
さらに「忍び返し」付きの柵が3メートルあるのですが、
もし逃げるならここしかない!
それが自分の中で「確信」に近いものになっていったのです。
「壁の高さを4メートルにしておけば」・・・
どうです?見てみたくなったでしょう。

動物の移動も「異常」でした。
9月21日にネコ科11頭、22日にヒグマ2頭を移動したのですが
1頭ずつ檻に入れてなどと言った時間的余裕がなかったので
全て麻酔をして寝ている間にトラックに積んで移動しました。
ライオンなど治療のために麻酔をかけることはあっても、
「寝室」から外に出すことはありません。
出すとすれば死んだ時だけです。
やはり「万が一目がさめたら」です。

何事も予定どうりにはいかないもので、
トラ、ライオンは一度に2頭ずつと思っていたのですが、
重たすぎて1頭ずつ運ぶことになりました。
麻酔がかかって「さあ始めるぞ!」と言ってからライオンが頭を上げること1回、
ヒグマが動き出すこと1回、ヒグマの呼吸が停止すること1回、
そのときは必死だったのですが、今考えると冷や汗タラタラ、
ちびっちゃうってとこですね。

まだまだあるけどオープンの日、
たくさんの人が見に来てくれて喜んでくれたので、
ほんとに「よかった」と嬉しかったです。
そして何より動物たちがイキイキと楽しそうで、
僕たちでさえ今まで見たことのない表情やしぐさを発見できました。

今、さる山の設計をしています。来年も楽しみです。

ライオン
画:ゲンちゃん